本格落語は私の造語で本格的な古典落語のことです。
本格落語を鑑賞できる機会は少ないのです。
でも古典落語を通じて歴史のことを知ることができます。
また名所や登場人物のことをわかれば楽しいですよね。
しかし、本格落語は難しいと思う方が多いですね。
そこで私の経験を通じて楽しむ方法をお教えします。
目次
本格落語はなぜ難しい?
テレビやラジオの番組にも寄席中継や笑点等があります。
ここで本格落語が演じられることはまずありません。
また定席(じょうせき)と言われる寄席でも本格落語を楽しめる機会は少ないのです。
本格落語とは何?
皆さんがよく見られている「大喜利」は、落語家が演じてはいますが落語ではありません。
「大喜利」は複数の落語家が「何とかけて何と解く」というような問答形式で行う芸で、いわば余興にすぎません。
小噺も、寄席などでは落語として扱われていることもありますが、厳密には落語とは言えません。
落語は「マクラ」に始まり、噺の「本題」の部分を演じ、最後に「噺のオチ」を付けます。
オチを付けないこともある人情噺のようなジャンルはありますが、基本的には「マクラ」「本題」「オチ」がそろって初めて落語となるのです。
寄席などでは時間の関係のせいか小噺だけで終わってしまう演者もいますが、小噺をマクラの部分に使うケースはよくあります。
そういった点では「小噺」の方が「大喜利」よりは少なくとも「落語」に近いかもしれません。
落語の歴史からみれば、簡単な落とし噺(現在の小噺のようなもの)から始まったといわれていますから小噺も落語の一種かもしれませんね。
寄席の形が今のような常設の小屋の形になり、客の目も肥えるようになって来て落語も今のような本格的な形となったのです。
本格落語は「マクラ」から始まって「本題」の順で噺を展開し、最後に「オチ」を付けるわけですから必然的に時間がかかります。
寄席で本格落語が少ないワケ
寄席ではいろいろな演目があって、前座から始まって大トリまでそれぞれ芸を披露して終わります。
しかしこの演目のすべてを落語家が演じるわけではありません。
前座噺から始まった後、漫才やコントが演じられ奇術等もあるといったように、寄席は演者も演目も盛りだくさんなのです。
このように演者の数が多いことから、1演目毎に演じる時間は必然的に15分から長くても20分程度の短い物となります。
漫才やコントのような演目ならこの時間でも客を満足させることができるかもしれませんが、本格落語の場合はとても時間が足りません。
またテレビやラジオでもこの寄席を中継するわけですから、当然のことに本格落語を鑑賞できません。
本格落語はどこできける?
そもそも本格落語に接することができる機会が少ないのです。
定席の寄席でもまれに大トリが大ネタの本格落語を演じることがあるようですが、あまり期待できないようです。
ホールで行われる「独演会」や「落語会」は本格落語を演じるために行われます。
いきなり「独演会」と言われても、普通の人にとってはどうやって選べばいいのかわかりませんね。
どうすればいいのかを考える前に私の経験をご紹介します。
(1)私の本格落語鑑賞への道
子どものころから家に手回しの蓄音機があり、SPレコードで初代桂春団治の噺は聴いていましたので落語には親しみがありました。
ただSPレコードでしたから時間も短く、たぶん本格落語ではなく小噺に毛の生えた程度の落語だったと思います。
また音源もあまり良くなかったせいか何か聞きづらかったという記憶もあります。
本格落語までにまだ距離があったかもしれませんが、この経験を通じて落語には大分近づいて行ったようです。
(2)最初の転機
60年近く前からNHKのラジオ放送の1時間番組で、たぶん月1回程度だったと思いますが30分の落語を2つは聴けるようになったことです。
本格的な古典落語になれば1時間を超える大ネタもありますが、30分あれば大抵の演目は聴くことができました。
当時は今よりも記憶力がよかったはずですから、放送を通じて多くの噺を覚えることができました。
(3)二度目の転機
さらに拍車をかけたのがテープレコーダの普及です。
今でも覚えていますが、大学生の時にアルバイトでためたお金でソニーのオープンリール式のテープレコーダを買ったのです。
たぶん3万円以上はしましたが当時の大卒の初任給より高く、学生にとっては大変な買い物でした。
このテープレコーダで録音した5号テープが数十本はありましたので、気に入った噺は繰り返し聞いていました。
惜しくもテープレコーダの寿命が尽きたこともあり、たくさん録音したオープンリールのテープもいつの間にか行方不明になりました。
しかし記憶力も良かった若い時代に覚えましたのでたいていの噺は記憶しており、今の噺家の噺と比較することもあります。
ここで問題は年寄りの常かもしれませんが、つい「今の噺家はもう一つ」だと思ってしまうことですね。
当時大阪では定席の寄席もなく、「花月」や「角座」のような大きな演芸場は行けばそれなりに落語も楽しむことができましたが、本格的な落語を鑑賞することができなかったのです。
(4)決定的となった転機
この転機は1972年で、三代目桂米朝が大阪のサンケイホールで独演会を開いたときに実物を見ることができた時にやってきました。
ラジオの落語で満足していたつもりだったのですが、実際の公演を見て驚きました。
落とし噺が落語の発祥ですから、本来はラジオやテープレコーダで聞くだけでも面白いのですが、噺の途中の仕草であるとか、上方落語特有の見台や拍子木を使った噺に接して本当にびっくりしました。
仕草の中でも特に驚いたのは「軒付(のきづけ)」という浄瑠璃を扱った噺の中で、「義太夫の太夫(たゆう)さんは裃(かみしも)着けていやが上にも大きく見せますが、三味線弾きの方は横でめり込むように」というくだりです。
ラジオで聞いているときはそこで起こる観客の爆笑を「ここでなんで笑うんやろう?」と疑問に思っていたのですが舞台を見ると一目瞭然でした。
「太夫さんのいやが上にも大きくなる」のと「三味線弾きのめり込むところ」を仕草で見せてくれるのですから爆笑が起こるのもよく理解できました。
私の本格落語へののめり込みのプロセスは以上の通りです。
本格落語を楽しむために、今の人はどうすれば?
説明の順序は難しいですが、まずどうして本格落語に親しむかでしょう。
多分、本格落語の演目のどれを鑑賞するかを決めるのは難しいですね。
私の場合はよくラジオ放送等で本格落語の色々な演目を聞くことができました。
私のようにラジオで聞き、それを録音して好きな時に何度も聞くというような方法は今では難しいと思います。
現代風の方法は色々あると思いますが、とりあえずは大喜利でもテレビの寄席中継でもいいですから聞いてみて面白いと思った演者(落語家)を決めてみたらどうでしょう。
たいていの人がネット環境にあるはずですから、気に入った落語家の演目をググってください。
ネットで調べて、動画であなたが気に入った落語家の演じるものがあれば最高ですが、同じ演目でも他の演者によって演じられる噺も見つかると思います。
まず一度その噺を聞いてみてください。
その噺が面白ければその噺が聞ける独演会や落語会を調べるのが良いのかもしれません。
本格落語を聞きに行く前に、とりあえずもう少し実演の落語のことを知るようにする方がいいのかもしれません。
そのためには回り道かもしれませんが寄席に行ってみるのがいいと思います。
寄席は敷居が高いという意見もありますが、寄席に入場し雰囲気を知ることは実はそれほど難しくありません。
寄席に入ってみて気に入ればずっと見ていてもよし、おもしろくなければ我慢する必要はありませんから適当な時に出て行ってもよいのです。
要は、演者や他の客に迷惑をかけないようにマナーさえ守れば寄席は自由なんです。
寄席では本格落語は難しいと言いましたが、本格落語を選ぶ近道はまず気に入った演者を確認することかもしれません。
小噺に近い噺しかしないかもしれませんが、あなたがこの噺家は面白いと思ったらネットで調べてその噺家の演じる演目を選ぶのです。
ネット社会ですから、今度はその噺家が出演する独演会や落語会を探せばいいのです。
ただこの方法は独演会や落語会は入場料が結構高いというハードルもあります。
もちろん私の経験でも説明しましたように、直接そのような会で鑑賞するのがいいと思いますが、今はネット社会です。
ネットでググれば結構その噺の動画が出てきて、ほぼ無料で噺や仕草もたのしむことができます。
その動画で確かめたうえで、落語会や独演会に出かけてみる方法は失敗を減らせるでしょう。
まとめ
折角落語を鑑賞するのであればやはり本格落語の実演を鑑賞するのがいいと思います。
もちろん出かけて行かなくてもよく、探していればテレビやラジオでも時々は独演会方式の本格落語も楽しめるようです。
加えて私の時代とは変わって今はネット社会ですから、ネットを駆使して気に入った動画を探したり、時にはホールにも出かけて是非実物の本格落語鑑賞にチャレンジして楽しんでください。
